薫「くそっ・・・なんてことだ!!!」
薫は持っていた槍・・・『ロンギヌスの槍』を地面に叩きつけた
光「北岡はもう・・・生き返らないんだね・・・それに、兄弟だったなんて・・・」
龍一「信じられないことだが、これも真実だ」
そう龍一が言う
そして薫が何かに気付いた。という表情をして、言った
薫「・・・そうだ・・・『アルティメットキャノン』・・・これが月影の手に渡ったら、あいつは!!」
龍一「その心配はない。このスフィアを手に入れたとき、それらしき残骸が落ちていた・・・ほとんど粉々になってな」
薫「・・・そうか」
薫は武器が相手の手に渡らなかったことに安堵感を覚えたが、同時に惜しさも感じた
アルティメットキャノンにより、月影は少なからずとも傷を負っていたはずだ
正直、月影の強さは未知数である
何故なら、月影にかかった敵はほとんどの人が瞬殺されており、その強さは、戦車の砲撃を間近で受けても生き延びたという噂だ
もちろんそのことについての真偽は明らかではない
だが、何より敵の攻撃を受けたことのないものであるから、一体どれくらいの攻撃が通用するのか分からなかった
そんな中で、月影にダメージを与えることができたアルティメットキャノン・・・心の中で、もしこれが使えたら。というのはあった
龍一「薫」
薫の内心を見透かしたような口調で喋る
龍一「お前の気持ちも分からなくはない。ただ、あまりアルティメットキャノンにこだわらない方がいい…アレは他の武器とは違う。
   持ち運びが可能な大きさで、破壊力が増したという点については確かに凄い。だが、おそらく攻撃したときの反動も馬鹿にならないはずだ・・・
   北岡だから使えたという点もあるだろう・・・それに、こっちには神器が二つある。無闇やたらに危険な武器を求めなくても大丈夫だろう」
薫「まぁ・・・そうだな」
薫はそう言いながら、腰に付いている球体―『ストックボール』に目をやる
一つは『ロンギヌスの槍』、二つめは『A.T.フィールド』、そして、最後の一つ・・・伝説の三種神器の一つとされる武器、『サタンクロス』
このストックボールは武器が中に入っている場合赤くなり、空になっている(現在使っている)場合は白く、色が付かない
だが、神器と呼ばれる武器・・・これは他とは違い、色が青く変わる
これは、政府から支給された武器ではなく、隠し武器といわれる武器の一種であり、神器はその中でも、最上級の値に位置した

ちなみに、薫はロンギヌスの槍とA.T.フィールドの二つの武器を同時に使うことが出来る
普通は一度に二つ以上の武器を扱うと、肉体がその力についていけず、治療不可能なほどの怪我を負うことも少なくない
だがまれに薫のような、武器との波長が合うものもいる。その者は一度に二つの武器を使えるうえに武器とシンクロするため、通常の五倍ものダメージを与
えることが出来るのだ

龍一「月影がキリエラを持っていたのは計算外だったがな・・・まぁ、そんなに焦ることはないだろう」
そう語る龍一
ちなみに、神器については一つの伝説となった物語がある・・・一つ、それに纏わる昔話を話そう・・・

時は古代、太平洋の中心に、ムーと呼ばれた超古代都市が存在した
ムーが存在したことが証明されたとき、世界は大きな驚きにつつまれた
ムーは、その当時の想像していた文明よりも遥かに進んだ文明を持ち、また、現代でも製造方法が不明な物が作られていたからである
この証明の決め手となった出来事は、過去にインドに存在した大数学者が書いた書が解析されたときであった
これにより、人類は今までの科学で説明することの出来なかったことが出来るようになったのである
空間内の瞬間移動。生命誕生のメカニズムの解明、それによる不治の病の消滅。実在した4次元空間。タイムマシン作成の理論完成などである
しかし、それは当時の科学力では不可能だとされていた。現代の科学力でも、実行に移すには10年以上の年月がかかると予想されているからだ
だが、それを実際に行っていた国があったことがわかった。それが当時神話上の物とされていたムー大陸にある都市、ムーである
ムーは世界で最も栄えた国になった。しかし、だからといって他国を侵略するわけではなく、平和をつかさどる国であった
だが、ある日突然、魔界より魔王が光臨し、ムーを支配した
人々が恐怖に怯え、逃げ惑う中、一人の青年が立ち上がり、魔王と対決する
青年は『キリエラ』と呼ばれる楽器を奏で、邪なる存在を打ち破り、魔王を倒したといわれる
しかし、魔王は死ぬ間際に二つのことを行った。ムー大陸の破壊と、一つの武器の作成である
魔王にとって、ムーはあくまでも支配下に置いておいただけであり、大陸一つを破壊することなど容易なことであった
そしてもう一つ・・・死ぬ間際に彼は、自らの残った魔力を振り絞り、『サタンクロス』を作成した
魔王より作り出されし邪なる武器・・・名前の由来より、魔王の十字架という意味が正しい
が、形状が某人気RPGのある武器と似ていることから、魔王の爪。という通し語がある
爪の長さは伸縮自在、どんなに硬かろうが軟らかかろうが、その全てを切り裂くとされる
もちろん、威力も絶大な分、コントロールするには条件がある。確固たる意志の強さだ。そうでないと、使用者自身が武器に飲み込まれてしまうのである
しかし、それにより武器に選ばれた者は、その武器の力を最大限に発揮すると言われている・・・
また、もう一つの神器は、かつてムーと同時期に、大西洋で栄えたアトランティスで作られたと言われている
虹色の貝と呼ばれる素材をベースに作られているらしいが、その真実は誰も知らない・・・


光「そういえば、最近不思議な武器を見つけたんだ」
薫「へぇ、どんな武器拾ったんだ?」
光は腰につけてあった青いストックボールを手に取った。そして、その手に刃渡り1mほどの大剣が現れた
光「拾ったっていうよりも、三つのパーツが合体した・・・っていえばいいのかな?この前デナドロ山に行ったときに見つけたんだ」
デナドロ山―その言葉が出ると、龍一の表情が何かハッとした表情に変わった
薫「デナドロ山か・・・あそこに生息するヘケランの骨でとったスープは美味しいんだよなぁ・・・なんてったって、世界三大美食の一つだし」
その味を思い出すような顔つきになり、遠い目をする薫。美味しいものにはなかなか目がないようだ
龍一「・・・その武器・・・なんて名前なんだ?」
光「武器の名前かい?『グランドリオン』っていうらしいよ」
龍一「グランドリオン・・・」
龍一の顔つきが、何かを確信したものに変わった
薫「龍一、聞いたことあるのか?」
そう問う薫
龍一「あぁ・・・昔、時を駆ける者達の本を読んだことがあるんだ。西暦1000年頃、ひょんなことで未来に飛ばされた少年達が、この星の悲惨な結末を目に
   した
   そこで少年達は星を救うため、時間軸を飛び越え、過去へ未来へと時を越えて旅をする・・・っていう話の内容なんだ
   グランドリオンってのは、その本に出てきた聖剣の使い手が使っていた武器のはずだ」
薫「なるほど・・・しかしお前、よく覚えてるな・・・」
龍一「内容が面白かったんでな。結構記憶に残ってたんだ」
そう言うと、龍一は光に向き直った
龍一「光・・・グランドリオンを入手したときの話を教えてくれないか?」
光「うん、いいよ。たいした話じゃないけどね」
そう言うと、光はそのいきさつを話し始めた








光「暑い・・・」
光はデナドロ山に来ていた。本人曰く、体力強化のためのトレーニングらしい
しかしその装備は重厚だ。立派な登山服、それに見合うだけの巨大なリュックサック、そして日よけと証する、結構場に不釣合いな麦わら帽子
本人曰く、「山を舐めるな!第一麦わらは涼しいんだぞ!夏は特に!」らしい。まぁ実際どうなのかは知ったこっちゃない
ちなみに今日は学校は休みだ。完全週休二日制だからである。それはプログラム中の今でも同じことだ
ちなみに光は山を登っている。照りつける太陽が眩しい・・・そして暑い
光「誰だよ・・・今日の最高気温は30度だって言ってたのは・・・」
30度どころの比ではなかった。分厚い服に重い荷物
麦わらを被ってるため頭への直射日光は防いでいるが、体感温度は40度をゆうに越していた。それだけ暑いってことである
光「・・・優介か」
脳裏に一人の快活そうな少年の顔が思い浮かぶ。視聴覚室をマイAVルームと化してしまったその極悪非道な少年。その上何故か彼女持ちである
光「後で締めておかないと・・・」
まったくの無表情で口に出す。その表情がなんか怖い
光「一休みするか・・・」
座り心地のよさそうな石を見つけ、そこに腰掛ける。火照った足を冷ますため、靴下ごと靴を脱いだ
ついでにリュックからコンビニで買ってきた「マーロン茶」を取り出す。キャップをあけ、その液体を体内に取り込んだ
光「ぷはぁ〜!やっぱ運動した後の休憩は最高だよ」
ちなみにこの「マーロン茶」、まろ茶とウーロン茶がミックスしている味らしい。あの有名な美食家、貝原夕山が絶賛したという、正に至高のお茶だ
光は一息つくと、改めて辺りを見回してみた。登っている途中でも感じたが、やはり高い場所から見る自然の風景というものは素晴らしかった
幸か不幸か、気温はかなり高い分、空は快晴でどこまでもはっきりと見渡すことが出来た
眼下に広がる緑の木々・・・そして遠方には、我が日本国を象徴する代表的な山、富士山(フジヤマ)がその堂々たる威厳を見せつけていた
大地の恵みというものは素晴らしい。彼はその光景を見ただけで、今までの疲れが取れるような気がした
光「ここも・・・プログラムが始まる前までは、もっと栄えていたんだろうな・・・」
そう呟く。そう、プログラムが始まってから規制が始まり、このような場所に人が出入りすることはほとんど無くなっていた
現に光の周りには誰一人としていない
昔は親子連れで登山を楽しむ人達もいただろう。元気いっぱいに登っていく子供。それを後方から優しい笑顔で見る両親
お昼ごはんを食べ、その場に座っておにぎりを頬張る・・・そんな幸せそうな光景が広がっていたに違いなかった
光「プログラムに・・・意味なんてあるのかな」
前々から思っていた疑問だった。そしてそれは今、確実に広がりを見せていた
プログラムが始まり、この国は戦乱の世の中に入った
毎日毎日繰り返し行われる殺戮・・・それが例えただのゲームであり、本当に死ぬわけでは無いことは分かっている
だが、やはり心の中でやりきれない気持ちがあった
彼は今、最強という名の称号を手にしている。それは事実であった。今まで幾度もの戦闘を繰り返してきたが、彼はまだ負けたことが無かった
総戦闘数は楽に10万を越える。だが、敗北数0。そして、最強の神器の使い手でもある・・・これが彼を最強と名づけられた理由であった
―まぁ・・・あまり考えちゃうのは体によくないか
靴を履きなおし、荷物を再び背中に担いだ。汗は既に引いている。むしろ少し寒いかもしれない。まぁこの天気に気温だ。3分もあればすぐに乾くだろう
ふと・・・光はそこであるものが目に入った。何の変哲もない洞窟・・・ただ、何か不思議なオーラのようなものを感じた
荷物を持ち、光はその洞窟に向かう・・・そして洞窟内に入り、彼は驚愕した
目の前には祭壇があった。まるで何かが祭られているような、そんな感じがする。高さ1メートルほどの四角い台座も目に入った
荷物を降ろし、その場所へと歩いていく。そこで台座の上に何かが乗っているのを見つけた。近づいてよく見てみる
そこには、元は一つの剣であっただろう・・・剣の刀身と柄、そして赤い輝きを放つ宝石が置かれていた
光は何気なくその刀身と柄を取ってみた。そこで驚く。予想以上に刀身が長かった。80センチくらいはありそうだ
その二つを左手に持ち替え、右手でその宝石を手にとって見た・・・次の瞬間
光「うわっ!」
いきなり宝石が輝きだした。光は驚いて両手を離してしまう・・・だが、それらはニュートンが発見した万有引力に従うことなく、そのまま宙に浮かんでいる
すると、折れた刀身と柄が結合した。そして、宝石が光を放ちながらその結合部分に沈んでいく・・・
一瞬強く瞬いたかと思うと、目の前には一つの大剣が浮かんでいた
光はその剣に目を奪われた。シンプルでいて、しかし尚且つどこか重厚感を感じさせる
そっとその柄を手にとって見る。すると、手に重みが伝わってきた。まるで羽のように軽い
光「凄い・・・」
試しに素振りをしてみる。ヒュンと、風・・・否、空間を切り裂く音が聞こえてきた
ふと目をやると、柄の部分に赤い文字が浮き出ていた
楔形文字に似ている。しかし、実際のそれは楔形文字よりはるかに複雑であり、現在の地球には存在していない文字だった
だが、何故か光はその文字を読むことが出来た
光「グランドリオン・・・」
そう、その武器の名前を口にする。そしてそのまま目の前にあった台座に目をつけ、横一線に一気に振りぬいた
「スパァンッ!」
そんな擬音語を本当に発するように、滑らかに切れた。切り口はまるで、チーズを切ったみたいだった
光「切れ味も凄い・・・なんなんだ、この剣?」
手に持ちながら頭に疑問符を浮かべる。と、その時
『ふあ〜、よく寝た』
光「!!!」
いきなり声が聞こえてきて、光はバッと周りを見渡した。だが、誰の姿も見えない
『兄ちゃんが封印といてくれたの?ありがと』
また別の声が聞こえる。辺りを見回しても、やはり何も見えない
光「・・・この剣か!?」
『ピンポーン、あったり〜。兄ちゃんなかなかやるじゃん』
声がそういった瞬間、いきなり目の前に変な生き物二匹が現れた
光「わっ!」
突然のことに驚く光
『こら!グラン、リオン!驚かせちゃ駄目じゃないの』
また新しい声が聞こえてきた。今度は女性の声のようだ。そしてその人(?)も目の前にいきなり姿を現した。だが、その姿形は今出てきた生き物とほとん
ど同じだ。
グラン「げげっ、姉ちゃんも起きたのか」
―姉ちゃん・・・あんま見分けがつかないのだが
姉ちゃんと言われた女性(?)は、他の二人に比べて服の色がちょっと違う。だが残りの二人はまったく同じで、どちらがどっちなのか検討がつかなかった
「当たり前です。まったく、落ち着きが無いんだから。あ、そこのあなた。私の名前はドリーン。封印を解いてくれてありがとうね。
 後二人声がするでしょ?これは双子のグランとリオン。どっちもうるさくてやんちゃなんだけど・・・大目に見てやってね」
光「・・・はい?」
頭の中は既にパニック状態だ。グランとリオンという少年達(?)が自分に質問攻めをしたり、ドリーンという女性(?)がそれを叱っていたりする
これが漫画なら、彼の頭の上には疑音符が何個も付いているだろう。それくらい混乱していた
―・・・整理してみよう。今目の前に突然現れた変な奴ら・・・双子の男の子で、兄がグラン、弟がリオン。それでその二人のお姉さんがドリーン・・・うん、ここ
までは大丈夫だ
光「ねぇ・・・思ったんだけど、何で剣の中にいたの?それに何で封印されてたの?」
グラン「あぁ、そうだね。教えておくよ」
リオン「僕達は古代魔法都市、ジールでグランドリオンが作られたときにその剣の中に入った精霊なんだ」
光「・・・はい?」
―なんだろう・・・何か大事な部分が抜け落ちてるような・・・
光「え〜っと・・・ジール?精霊?」
再び頭の上に疑問符が浮かび上がる
ドリーン「こらリオン!人に物事を話すときは、ちゃんと相手に分かりやすく伝えろって・・・あぁぁ、まずい、もう残り時間が少ない〜
     マスター、すみません。外に出るの久しぶりだったので、もう時間が無いっぽいです。すみません、さよなら!」
そう声が聞こえるやいなや、ドリーンの姿が見えなくなった。続いてリオンの姿も。そして、最後にグランが残った
グラン「マスター、僕達精霊は、剣の外に出て活動することが出来るんだ。その時にちょっと魔力使うんだよね
    普段ならずっと外で話してても平気なんだけど・・・復活したばかりで魔力がそんなに無かったんだ。じゃあマスター、近いうちにまた会おうね」
元気な笑顔が聞こえてきそうな声で、それでグランも風のように消えていった
そしてそこには、一人ポツンと取り残された(元々一人だが)光が立っていた
彼の視線は虚ろになっている。急激に起こった物事の変化について行けてなかったのだ
光はそれから何時間か、その体勢で突っ立っていた

そして、グランドリオン内部
リオン「姉ちゃん!僕にはあんなこと言っておきながら、結局自分だってうまく説明できてなかったじゃないか」
ドリーン「う、うるさいわね!時間が無かったのよ、しょうがないじゃない!」
グラン「まぁまぁ二人とも、抑えて抑えて」
喧嘩する姉と弟。それを止めに入る兄。中間管理職はいつの世も辛い
そんな喧騒の中、グランは今あった少年、光に不思議な感触を感じていた
グラン「あの人・・・腰に玉つけてた・・・あの中身・・・もしかして」
だがそんな思考も、うるさい二人に遮られる。今考えていたことは、あっという間に頭の隅にいってしまった
だが、グランは後に思い出し、知ることになる。光がグランドリオンを超える、現世で最も強い武器を持っている。ということを・・・

一方、ふぬけ状態から立ち直った光
とりあえず洞窟から出る。すると、夕陽が差し込んでいた
山の上に光る赤く、オレンジが入った光。そして、闇をもたらす前の一時の輝き
光はその神秘的な光景に、目を奪われていた・・・








光はグランドリオンの入手経路について一通り話し終えた
龍一「光・・・その時に、もう2つほど何かなかったか?」
光「え?いや、なかったけど・・・」
龍一「そうか・・・」
少し考え込む龍一
薫「後2つって・・・まだ何かあるのか?」
龍一「あぁ・・・読んだ本によるとな、グランドリオンはまだ更なる進化を遂げるはずなんだ。確か、グランドリオンを元々持っていた人物がいてな。
   その人にあって真の力を解放するんだ。その時にアイテムが2つ必要なはずなんだが・・・」
薫「なるほど・・・そのアイテムって、いったい何なんだ?」
問う薫。だが、龍一は困った顔を浮かべた
龍一「いや・・・それがだな、本の劣化が激しくて、その名前の部分が読めない状態だったんだ・・・悪いが、それは分からない」
光「そっか・・・でも、後2つか・・・うん、きっと見つかるさ。」
笑みを浮かべる光
―やっぱ・・・言っちゃ悪いが、とても世界最強だとは思えないよな
心の中でそう思い、苦笑する薫
「悪いな。どうやら遅れてしまったみたい・・・だね」
ふと、まだあまり聞きなれていない・・・だが、聞き覚えのある声が耳に入った
光は声がした方を見る。そこには、鹿野(かの)が立っていた
クールな声。さらりと流れる銀髪。180は超える身長。そしてその実力は、光の国第三部隊“運命(さだめ)”隊長でもある
鹿野は昔、『王騎士』という学校に所属していた
鹿野と、その国の校長だった三木 裕太(みき ゆうた)はかなりの実力者だった
だが、いろいろなイザゴダが発生し、光の国と王騎士は戦争を余儀なくされた
戦争は光の国が勝ち、鹿野はそのまま光の国へと転校してきた。だが、三木の存在はその戦争以来行方不明となっていた
龍一「遅いぞ、鹿野」
やれやれ、と言うような表情で龍一がいう
鹿野「あぁ、ちょっとな」
鹿野はそういって、自分の手の中に視線を落とした。見ると、そこには小さな子猫が抱かれているのが分かった
鹿野「捨てられててな…多分生まれたばかりなんだろう。ちょっと迷ったんだが、連れてきたんだ」
鹿野は子猫を地面に放す。すると、少し戸惑っていたが、光達の足元に擦り寄ってきた
光「あはは、よってきたよコイツ」
しゃがんで、猫とじゃれあう光。すると、校舎から薫と長浜が歩いてきた
薫「まったく、あいつ等と来たら・・・」
長浜「はは・・・あれ、鹿野さん?」
薫「え?おっ、鹿野じゃん。遅かったな」
三人の元へ歩いてくる二人
鹿野「あぁ、ちょっとね」
子猫に視線を下げ、喋る鹿野
薫「おっ、可愛い猫だな」
しゃがんで手を出す薫。が、子猫は薫が近づくと、敵意を見せ、唸り始めた
薫「っとと、嫌われちまったかな」
苦笑しながら立ち上がる薫。このまま構うと、何ヶ所かひっかかれてしまうことだろう
―・・・ま、仕方ないか
フ・・・と、サタンへと目をやる薫
いくら神器といえども、サタンクロスは魔王から作られた・・・悪の武器である。このような動物達は、本能でそれを察知しているのだ
鹿野「ほら、おいで」
鹿野が呼ぶと、子猫は鹿野へ、とことこと歩いていった
鹿野は一見冷たそうな感じがするが、優しい心の持ち主だ。動植物をこよなく愛する。きまぐれな猫がついていったのもそのためだ
光とは違った優しさである。さぞや女性にはモテるだろう
―まぁ・・・だからこそ、ギャップが激しいのかな
その構えは・・・死神の構え
その構えから動くとき、それは相手の命をただ奪うのみの、死神の鎌の如き斬撃・・・
薫はそんなことを考える。ふと、何気なく空を見上げる。雲ひとつない快晴・・・凄く天気が良かった
―時の移り変わり・・・か。速いもんだな
思えば、プログラムが始まってから一年近くの月日が流れていた
ここも元は普通の学校だった。だが、運良く力を持つ者が数多くいたため壊滅することもなく、逆にその勢力を伸ばしていったのだ
全校を統一したとき、何が起こるのか?
多くの者が抱える疑問だ
思考の海へと沈んでいく・・・だが、すぐに現実に引き戻された
「ビーッ!ビーッ!ビーッ!」
突如鳴り響く警報。一瞬にして静まる学校内。そして・・・
「緊急伝達、緊急伝達。本日14:27、『裏切りの牙』より宣戦布告を確認。同時刻、戦略の発動を確認。本生徒は速やかに戦闘配置につけ!
  繰り返す・・・」
鹿野「ついにきた・・・か」
龍一「あぁ・・・そうみたいだな」
光「薫、龍一、鹿野。僕達は先に攻めるよ!本隊の指揮は・・・長浜、頼むよ。敵部隊を壊滅させた後、牙へと向かって」
薫「了解」
長浜「分かった」
―遂に来たか・・・
心の中でそう思う薫
そして、戦いの宴は始まった・・・



















学校戦争
〜The Endless Battle〜
後編
陽が沈み、辺りは赤く染まっていた 夕陽が照らすものは、瓦礫の山。その瓦礫の中に、人が一人見えた 悲しげな表情をし、その視線は夕陽を見つめている そこにいるのは薫・・・そこにあるのは廃墟と化した牙跡・・・そして、足元に転がる刃の折れた爪 それはかつてサタンクロスと呼ばれた、三種神器の一つであったもの かつて発せられた邪悪だが強大な力のオーラは感じられず、無残にもゴミと化してしまっていた 薫は鼻歌を歌い始める・・・それは高低の差が激しく、そして荒波のようなリズムを持つ歌・・・レクイエム 時は・・・数刻前に遡る 薫「はぁぁぁぁっ!」 左手を水平に切る。そこから飛び出すオレンジ色の光 目の前にいる敵は、その体が分かれ、上半身と下半身に切断された ―後ろか! ハッとすぐさま左手を後方へとかざす。フィールドが発生するのと、ソウルクラッシュがそれにぶつかるのとはほぼ同時であった 右手で何かを引き寄せる行動を取る・・・すると、目にも止まらぬ速さで向こうから何かが飛んでくる 「ザシュッ!」 飛んできた物・・・ロンギヌスの槍はその二股の先端を、ドリルのように回転させ一本の槍とする。そしてそのまま敵の左胸に突き刺さった 「プシャァッ!」 飛び散る鮮血。血が顔にふりかかる。だが、それにひるむことはない。槍を右手に取ると、また左手を切り、壁を発生させた 裏切りの牙のとある廊下の一つ。長さは全長200メートル近くはあり、かなり長い。横幅は6メートルほどと、結構な広さがある そして、次々へと襲い掛かる敵の数々 薫「くっ・・・やっぱ多いな」 愚痴を叩きながら、敵を次々と倒していく。だが、倒しても倒しても敵は一向に減る気配がない ―おかしい・・・何故こんなに生徒が残ってる? 牙には総勢1万人近くが所属している。本来戦争ならば、半分が敵地に攻め、半分が校舎に残り防衛するというスタイルだ だが、この状況を見ると大半が校舎に残っている。さらに疑問はまだいくつかあった 光には4万人近くの人数がいる。牙と比べても、圧倒的な戦力の差がある 薫は、牙と闇が共同戦線を組んで攻めてくるものと考えていた 闇の人数も4万程で、光とほぼ同じくらいだ。同時に攻めてくれば、相手の方が有利である だが、無謀ともいえるこの戦略発動・・・意味が分からなかった。ちなみに、闇から布告は出されていない もし出された場合、光の生徒が持つ武器からその旨を知らせる声が流れてくるからだ。そして今現在、その声は流れていない ―出されたとしても、1:3の割合で攻めと守りについている。少しは防衛出来るとは思うが・・・ 薫「おっと」 そんなことを考えてたせいか、戦闘が少しおろそかになっていたらしい。とっさに迫っていた攻撃を回避した 槍を額に突き刺し、壁でその後ろにいる敵もろとも切断する ふと、窓から校庭が見えた。(ちなみに校舎は全6階、薫は3階の廊下にいる) 人だかりが多い中、ぼっかりとドーナツ状にあいた空間がある。そこに見える、2人の人影 薫「龍一・・・それに、アレは・・・」 龍一「はぁぁっ!」 龍一は右手に気を集中させると、そこから巨大なエネルギー弾を放った。エネルギー弾は、敵の頬をかすめ空へと消えていく 龍一「なかなかやるな・・・」 問う龍一 「そっちこそ・・・伊達に光の隊長って訳じゃないんだな」 答える赤毛の男 紅ノ鳥(クレナイノトリ)。『裏切りの牙』第一部隊“紅の導き”隊長。妖花烈風を自在に操る実力者である 龍一「ふん、悪いが狙いはお前ではない。片付けさせてもらう」 龍一再び、右手に力を集中させていく 彼の持つ武器・・・『アナザディメンション』は、体内埋め込み型の武器である 武器ケースの球よりさらに小さい球を手に取り、力を込める。すると武器は手のひらに吸収され、手から強力なエネルギー弾を発射することが出来るのだ ちなみに体内に埋め込むといっても、身体に害はない。当たり前だが 紅ノ鳥「どれどれ・・・じゃ、次はこっちの出番かな」 不適に笑う紅ノ鳥。龍一はそれに悪寒を覚えた 龍一「ちっ・・・気持ちの悪い奴だ」 龍一の右手が、先ほどとは比べ物にならないほど光りだす。エネルギーチャージが終わったようだ 龍一が打とうとした瞬間、そのタイミングを見計らった用に紅ノ鳥は妖花烈風をくりだしていた コンクリートをまるで豆腐を切るように切断する。そんな恐ろしい切れ味を持つ花びらが、激しい豪風とともに飛んでくる だが龍一は、すぐさま上空3メートルに飛び上がり回避した。そして右手を下へと向ける 龍一「くらえっ!アナザディメンション!」 その声とともに、先ほどより二回りほど大きいエネルギー弾が放たれる。そしてそれは紅ノ鳥にあたるかと思われた 龍一「!!!」 ふっ・・・という擬態語とともに、紅ノ鳥はその姿を消していた。そして、上から聞こえる冷徹な声 紅ノ鳥「甘いな・・・」 と、いきなり紅ノ鳥の右足が緑色に光りだす 紅ノ鳥「ドラゴンライダーキック!」 そう叫ばれた声とともに、蹴りは龍一の背中に入った 地上まで飛ばされ、叩きつけられる龍一。そこにはミニクレーターが完成している 龍一「く・・・そっ」 ―油断した その一言が脳裏に浮かびあがる。すぐさま体勢を立て直そうとしたが、攻撃のショックにより体が思うように動かない そして、紅ノ鳥は右足で頭を踏みつけ、嘲笑うかのような声で言った 紅ノ鳥「無様だな・・・真田」 ぐりぐりと、足でタバコを揉み消す動作をするように龍一の頭部を踏みつける 龍一「畜・・・生・・・」 グッと、手のひらを握り締める。その手は、微かながら輝きを帯びていた ―後はチャージが溜まりさえすれば・・・すぐに打ってやる 龍一はこの屈辱的な状況を打破するための方法を考えていた まず、1/3程ためたエネルギーでマルチディメンションを放ち、敵を威嚇しその勢いで距離をとる (アナザディメンションはその威力により、マルチ→ダーク→アナザと変化する) そして後は再びエネルギーを溜め、アナザとして放つのだ ―もう少しだ・・・ もう少しで充電が完了する。そして、動こうとしたそのときだった 突如、右拳にとてつもない力が加わった。その力は指の関節を外し、手の全ての指を破壊した 龍一「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 頭で意識する前に悲鳴が上がる。何が起こったかわからず、龍一は右手を見た 指は曲がってはいけない方向に曲がり、皮を突き破って骨が見える。そして指の感触も無い。指の骨が砕けてしまっていた 紅ノ鳥「まだ力が残ってたんだねぇ・・・脱帽するよ。ま、痛みでそれどころじゃない今の君に何をいっても無駄かな?」 紅ノ鳥の声が微かに聞こえる。だが、そいつの言うとおり、痛みの感覚が龍一の体を貫いていた そう、龍一の攻撃を見切った紅ノ鳥が右手に向かってドラゴンライダーキックを放ったのである 背中に当たって、悶絶するほどの威力。それが全て一箇所に集中して直撃したら・・・最悪のダメージを与えていた 薫「龍一!」 状況を見ていた薫が叫ぶ。だが次に物を考える間もなく敵は次々と襲い掛かってくる 薫「くそっ!」 仲間が危機に立たされている。今すぐにでも助けに行きたい。だが出来ない。心の中に苛立ちが募り始める 「薫!」 ふと、聞きなれた声が聞こえてきた。声のした方を振り向く。そして人物を確認し、彼も声を上げた 薫「真!」 見ると、真がグランドリームを振りかざしながらこちらへ向かってきていた 真「薫、早く龍一を助けに行け!ここは俺に任せろ」 薫は一瞬驚いた表情に。だがしかし、すぐに笑みを浮かべ、言った 薫「分かった。じゃあ後頼むぜ、親友!」 ガラガラ・・・と、窓を開ける。ちなみにココは三階だが、薫にはちゃんとその対策もしてあった 真「薫・・・奴はかなりの使い手だ・・・本気でいけよ」 薫「あぁ・・・分かってるよ」 薫は槍と壁を収納し、青いストックボール・・・神器サタンクロスを取り出した 薫がそれを手に持った瞬間、一瞬にして辺りの空気が変化した 大地は揺れ、鳥は泣き叫び、負の力が辺りを押し包む 目は金色に光り、それはまるで悪魔の瞳のよう。そして背中には金色の大きな翼が出現 薫はサタンを手に持ち跳躍する・・・全てを破壊する悪魔のように 紅ノ鳥「アイツは・・・」 ふと、紅ノ鳥が動きを止め、校舎のほうを見上げていた 龍一もそちらへ視線を動かす 龍一「薫・・・サタンを使ったな・・・」 変貌した薫を見ながら、そう呟く 右手には大型の爪・・・その長さは1メートルほどはあり、爪先についている紫色が妙に生々しい 薫は光の翼をはためかせ、ゆっくりと地面へ降り立つ。そして、紅ノ鳥を見据えた 直後、体が吹き飛ばされそうなほどの衝撃に襲われた ・・・いや、襲われたと感じた。というふうが正しいのかもしれない。現に薫は何もしておらず、ただ見据えているだけであるからだ だが紅ノ鳥は、薫のその気迫に恐怖を感じていた ―・・・これが・・・橘薫の真の力なのか・・・ 紅ノ鳥は無意識のうちに後ずさる 絶対的な強者に狙われた、非力な弱者。もっと例をたとえるなら、蛇に睨まれた蛙。だろうか 自分が後ずさりしていることに気がついた紅ノ鳥は、屈辱と怒りに身を震えさせた 紅ノ鳥「馬鹿な!この俺がビビッてるだと・・・」 紅ノ鳥「・・・クソッタレがぁぁぁぁぁ!!!」 叫び、咆哮する。そして薫へと突進していく 音速の壁を越えるスピードで、一瞬にして薫の前へと出る。そしてドラゴンライダーキックを放った だが、薫はいとも簡単にその攻撃を避けた。そして・・・ 薫「・・・終わりだ!」 叫ぶやいなや、サタンを横一直線に振りぬく。すると爪先が伸び、紅ノ鳥を切り裂いた 紅ノ鳥「ぐあぁっ!」 叫び、倒れこむ紅ノ鳥。そして彼の背後にあった校舎に、巨大な三本の亀裂・・・爪跡がくっきりと残った 薫はサタンを手から外した。すると薫を包んでいた禍々しいオーラが消え、普段の薫の姿に戻った 薫「大丈夫か?龍一」 龍一の側にかけよっていく。龍一は体を少し起こした 龍一「ちょっとあばらが何本か・・・な。油断したよ。ま、自己治癒力でなんとかなるだろう」 一息つく。そして 龍一「やはり・・・強いな。薫・・・」 薫「そう?でも龍一だって油断してなければ勝てたんじゃない?」 その言葉を聞き、苦笑する 龍一「まぁ・・・な。だが、お前みたいに楽に勝つことは出来ないだろう。それだけの力を持っているってことだ」 軽く微笑む龍一 薫「うん・・・ありがとう。・・・まぁひとまずは、この状況をどうやって回避するか。だな・・・」 辺りを見回す。すると、見えるのは敵・敵・敵。簡単にいえば囲まれていた。50mの位置を丸く。層は八層くらいありそうだ 薫「・・・サタン一回外しちゃうと、10分くらい使用不可になるんだけどなぁ・・・龍一、アナザ撃って逃げ道とか作れる?」 問う薫。だが龍一は首を横に振る 龍一「悪いな・・・そうしたいのは山々だが・・・今の戦闘でアナザが壊れたんだ」 そう言い、龍一は傷ついた右手を見せた。ボロボロになった手のひらの上に、2つに割れたストックボールが存在した 驚く薫。だが、すぐに表情を変化させる 薫「困ったなぁ・・・壁と槍でも、こんなに多いとね・・・」 おそらく周りにいる奴らは、紅の導きの隊員であろう。紅ノ鳥ほど強いというわけではないが、そこそこの実力は持っている それが大量に・・・というわけで 薫「ちょっとピンチ・・・だなぁ」 悩み、困る薫。龍一と二人でどうしようかと悩んでいる間も、敵はじりじりと近づいてくる ・・・だが、この物語は急な展開が多い。きっと誰かが助けに来るだろう。そんな謎の思案を薫が考えていると、案の定助けがきたのであった そいつは、突如上空から降ってきた。地面に着地し、土ぼこりを払う。2階の窓が開いているので、そこから出てきたんだろう 薫「鹿野…助かったよ」 安堵の表情を見せる薫の視線の先には、鹿野がそこに立っていた 鹿野「ふむ…雑魚がたくさん…か。どれ、この状況下ならアレがうまく効果が出るだろう」 そうして鹿野は、青い球を手に取る。光が放たれるとともに、形がどんどん具現化していった それは禍々しいオーラを放つものだった 巨大な鎌。刃の部分は3メートルほどの長さを持つ、巨大なものだ 鎮魂の曲刀―彼はそう呼んでいる。使者たちの魂が宿り、冥界へと続く鍵になっているという噂を聞いたことがあった 敵はその空気を肌で感じ取り、後ずさった なんて説明すればいいのだろう…絶対的強者に食われる弱者。といえばいいだろうか? 鹿野は鎌を右手で持つ。そしてゆらりと構えると、言葉とともに鎌を振るった 鹿野「サイレント…ワルツ」 静かに、しかし凛とした声が響き渡る。それとともに 「ビュオン!」 風を切る音。だがその音は鋭利で鋭い。まるで空間の一部が裂けたように そしてその巨大な刃は、確実に相手を横一線に断裂させた 体が上下に分かれ、一瞬にして生命を絶つ。数瞬後、彼らは跡形も無く消えていった そして鹿野は、鎮魂の曲刀を仕舞った 龍一「相変わらず凄い武器だな…」 立ち上がる龍一。傷は少しずつ回復しているようだ 鹿野「あぁ、だが使い勝手はいい…使ってみるか?」 そういって差し出す。だが龍一は首を振ると 龍一「無茶いうな。それはお前だからこそ使える武器だ。俺が使ったらすぐに武器に支配されてしまうだろうな」 そう言い、苦笑する 薫「ところで、光見てない?」 尋ねる薫。だが二人とも首を横に振った 鹿野「いや…見てないな」 龍一「こっちもだ。そうだな…今頃校長室…にでもいるんじゃないか」 薫「校長室…か」 思案し、頷く薫。その可能性がもっとも高い…と ―そして、あの二人は… 薫の脳裏に、両校の校長が浮かび上がる 薫「因縁…宿命…怨恨…の対決か。」 ―最後は何かおかしいか そんなことをふと、感じた 戦争で勝つためには、相手校の校長室にあるコアと呼ばれる真紅の起爆装置を破壊しなくてはいけない コアを破壊すると、その学校は崩れ去る。もちろんたまに生き埋めになるものも出てくるが、一日たてば復活しているのだ 薫「さて・・・校長を助けに行きますか」 同時刻、校長室にて 二校の校長同士が、その戦いに火花を散らせていた グランドリオンを片手に切りかかるのは光 対するは、愛刀である魔剣アルハザードで応戦する牙校長・星夜 惑(セイヤ ワク) 二人は死闘を繰り広げていた。両者とも幾多もの切り傷が全身に存在する。だが、どちらもギリギリで避けきっているため致命傷には至ってはいない 剣がぶつかる度、大気が揺れる。そしてそのうごめくスピードは最早、常人には捉えきれないほどであった 光がグランドリオンを横薙ぎに振る。星夜はそれを跳んでかわし、上空から勢いをつけて振り下ろす だが、すぐさま横にずれ、最小限の動きで攻撃を回避すると斜め下から上へ、星夜目掛けて振り上げる 「シュバァッ!」 大気が切れる音がする。常識ではありえない、しかし、それほどの威力を秘める攻撃 だが星夜はそれをかすり傷一つでよけ、後退し少し距離を置いた 息をつく星夜。対して、呼吸一つ乱さない光 星夜「なんてぇ…奴だ」 誰に言うまでもなく、そう呟く ―昔より…また一段とパワーアップしてるか そう思い、左手のアルハザードを握り締める。そして、疑問に感じていたことを問う 星夜「光…何故、本気を出さない」 その言葉に反応し、身を少し振るわせる光。その反応を目にし、星夜は更に続けた 星夜「何故虹を使わない…アレを使えば、俺なんぞ一撃で済むはずだ」 『虹』―星夜が口にした言葉。伝説の三種神器の最後の一つ。古代アトランティスで作られた、伝説の剣 その威力は、サタンクロス、キリエラを遥かに凌駕するといわれる…現世における最強の武器だ 光はすっと首を振り、星夜の目を見て言う 光「惑さんとは…完成された武器の力じゃなくて、神器じゃなくて…自分自身の力で戦いたいと思ってるから」 星夜「ふん…何言ってんだ馬鹿野郎。俺とお前の力の差は歴然…昔とはまるっきり逆でな。手加減のつもりだろ…違うか?」 星夜が出した言葉。昔 彼ら二人は、先輩・後輩の中であった そしてプログラムが始まる前、彼は光の国にいた… 鹿野「星夜が光の国に?」 廊下を走りながら、鹿野が驚いた声で言った 龍一「あぁ、まだプログラムが始まる前…憲法改正が実行される前の話だ。惑は俺と同じクラスでな…それで、光とは部活も一緒。友達だったんだ」 薫「俺はあまり星夜と親しくはなかったから分からないけど…結構仲良かったよね?三人は」 龍一「あぁ、結構いろんなとこに遊びにいったりしたな。まぁ程なくすぐに転校してしまったんだが…」 昔を思い出そうというような表情になる龍一 鹿野「なるほど…しかし信じられないな。星夜が龍一達と友達…だったなんて」 そう喋る鹿野。王騎士は昔一度、牙と戦ったことがあった。ただ、決着はつかず引き分けに終わったが そしてその時、鹿野は星夜という人間についてよく知ったつもりだった。そう、あれはまさしく… 鹿野「悪魔…だ。あの魔剣は正にそう呼ぶに相応しいものだよ」 光「そんなことは…ないです」 ギュッと、グランドリオンを握り締める 星夜はそんな姿を見、少し苦笑する 星夜「変わってない…変わってないな、光。やはりあの時のままか…」 ふと光は、星夜が左手を球に伸ばしたのを見た。そして、思い出す ―惑さんは元来サウスポー…左利きのはずだ。でも、今アルハザードは右手にもたれている。…まさか 光がグランドリオンを顔の前に横に出したのと、星夜の左手から煌く刃が飛んできたのはほぼ同時だった 「ガキィン!」 高い金属音が鳴り響く。光は攻撃を受けると、即座に後方へ飛んだ。そして、星夜の左手に持たれている武器を見、呆然とした 光「アレは・・・」 そこにあったのは、美しく光り輝く剣 アルハザードが負の塊なら、その剣は正の塊だった そして、光はその武器を見たことがある。昔よく星夜の家へ行ったとき、いつも床の間にかかっていた伝説の名刀 光「聖剣…ラングリッサー」 武器の名前を呟く 星夜はその言葉を聞き、苦笑をもらす。そして左手に視線を落とし、喋る 星夜「そう、見たことあるだろう?光。ラングリッサー…遥か昔、聖剣と呼ばれた剣」 右手へと視線を落とす 星夜「そして、その聖剣と共に世に混乱をもたらした魔剣、アルハザード。今、人はこういう…聖剣と魔剣を使う男。と」 星夜はそういうやいなや、光へと飛びかかった 咄嗟に回避するが、それも紙一重。すぐに防戦一方の形になった ―強い そう感じる。それは昔を思い起こさせるような物 あの頃、あの人は目標とする人物だった…そして、その強さに憧れていた あの人がいなくなると聞いたときは、本当にショックだったものだ。自分も同じ学校に転校しようとしたぐらい だからこそ…牙の校長で内乱を起こし、トップに立ったときも衝撃を受けた もうあの人は僕の知っている人ではない。ただただ残忍な一人の男。プログラムという名の潰しあいのゲームに乗った者…と 星夜「そろそろ楽にしてやるよ…光」 星夜はそう言うと、二つの剣を一つに重ねる。一瞬輝いたかと思うと、それはさらに大きな剣となっていた 星夜「俺が手にしてきた剣で、絶対的な力を誇る武器…真ラングリッサー」 ふらりと光の前へ出る。剣を上段に構え、そして… 星夜「終わりだ…」 星夜は剣を振り下ろした 薫「見えたぞ、アレだっ!」 走る薫達の前方に見える立て札。校長室というプレート サタンを構え、その扉を破壊。そして中の様子が見えた そこには、驚きの表情を浮かべる二人の校長。星夜の手に握られた真ラングリッサーは光の頭の上で止まっていた その剣の先には、一つの長剣。薫達も見覚えのある、しかし、先ほど見たときとは何か…雰囲気のようなものが感じられていた 『危ないよマスター、もっとしっかりしてくれないと!』 剣からそんな声が聞こえる。思わず耳を疑った 光はその声の方向へ顔を向ける 光「その声は…グランか?」 聞き覚えのある名前。戦闘前に光がいっていた精霊だろうか?姿は見えないが、気配のようなものは感じ取ることが出来た。そして、別のもう一つの声 リオン『そうそう、グランの言う通り。でももう大丈夫だよ。やっとこの状態にも慣れてきたし。力が引き出せると思うよ』 光「リオンまで…」 リオン『うん、そうだよ!元来力は…って姉ちゃん、人が話してるんだから邪魔しないでよ!って痛い痛い!耳を引っ張らないで!』 緊迫した場に場違いな空気が漂う。光は呆気に取られている星夜から離れ、距離をおいた ドリーン『リオン!あなたが話し出すとろくなことにならないから少し黙ってなさい!…マスター、私が説明します。 本来グランドリオンは、聖剣と呼ばれた武器でした      全ての戦いが終わった後、このグランドリオンは家宝として人から人へ受け継がれていきました      ・・・しかし、長い間人の手に渡り、多くの悪意を見てきました      徐々にそれが積み重なっていくうちにグランドリオンは、いつしか魔剣へと姿を変えてしまったのです      魔剣化した後、グランドリオンは私たちの手に負えなくなっていきました。私たちはそこで苦渋の決断をしました。      グランドリオンを聖剣へと戻す・・・その為の方法として、我々兄弟三人が分離して、ただの剣の欠片に戻して負の力を消し去ろう・・・と      幸い負の力は消え、さらにマスターに拾ってもらい私たちは再び一つになることが出来ました      ですが、復活して間もない今の時期、力を全て解放してしまうと、暴走して負の力を吸収してしまう恐れがありました。      ・・・しかし、マスターのピンチに手を咥えて見ているわけには行きません。      さぁマスター、グランドリオンの真の力は引き出されました。私たちもお供いたします…頑張ってください』 ドリーンの声が薄れていく。それとともに、光は湧き上がる力を体に感じていた 光「凄い…力が…力があふれてくる」 光は剣を握りなおす。そして星夜に向かった 剣を横薙ぎに振る。星夜はそれを剣で受け止める 「ガキィッ!」 凄まじい威力を持ったもの同士がぶつかり、辺りに真空波が巻き起こる 光は一歩引いて、また突撃。しかし、難なく星夜に受け止められる グランドリオンの真の力を引き出した光の強さは、すでに薫が敵う相手ではなかった しかし、その光と互角に渡り合っている星夜もまた、真ラングリッサーの力でぶつかりあっていた 響き渡る、ぶつかり合う剣の高音。軽やかに舞う二人。それはまるでダンスを踊っているようで… 薫「すげぇ…」 思わず、感嘆の息を漏らす それもそのはずだった。星夜の実力は計り知れない。かつてはあの光を凌ぐ実力者だったというのも、この戦いを見れば分かる気がする ―これじゃやばいな・・・ そう考えるのは星夜。現在光と自分は互角で闘っている。だが、もう少し時間がたてば、疲労という名の魔の手が自分を襲ってくるだろう ―問題はどうするか・・・だな 剣を受けながら考える。そして一つの案が閃いた 星夜はいきなり光の持っているグランドリオンの柄を掴む。そして体内にある力を剣へと逆流させた ドリーン『きゃあああああああ!』 叫び声が響き渡る。光は驚き、問う 光「どうした!?」 グラン「ち、力が・・・」 リオン「抜けていく・・・」 見れば、グランドリオンから白い輝きが失われていき、逆に黒い輝きが灯火始めていた ドリーン「すいません・・・もう・・・駄目です!」 叫び声と共に、グランドリオンはその形状、色を変えた 輝くほど白かった刀身は、今や赤黒く染まり、剣全体から負の闘気を発していた そしてその剣は、自らの意思を持ったかのように・・・光の腹部へと吸い込まれた 「ザシュッ」 肉を切り裂く音が響く 一瞬の静寂の後、光の口から真紅の液体・・・血が流れ落ちるのが見えた 薫「光・・・」 脳は今にも助けに行こうという信号を出した しかし、運動神経がそれをカットする。今行っては自分もやられる・・・と 光がピンチになったら、自分たちが助けに行くつもりだった。そして、ついたった今までそう行動するはずだった ・・・だが、血塗られた魔剣と化したグランドリオンは、薫達の足をその場に止めた 薫「敵わない・・・」 呟きでる本心 グランドリオンは今、サタンと同等・・・いや、それ以上の力を持つ剣へと生まれ変わっていた 鹿野「しくじったな・・・純粋な攻撃力なら負けてはいないが、攻撃に移るまでのタイムラグで消されてしまう・・・鎮魂の曲刀もただの飾り・・・か」 そういい、手を握り締める 龍一「くそっ・・・なんでこんなときに・・・武器がないんだ」 龍一は唇を噛んだ 魔剣は光から抜き出される。ぬらりと赤く光る鮮血。光の腹部から血が噴出した 光「がっ・・・」 咳き込む光 星夜「光・・・もう終わりだ」 冷たい、感情の無い声で星夜が喋る 光の体を蹴飛ばし、地面に転がす 光「ぐっ・・・がはっ、げほっ、げほっ」 星夜「この力があれば・・・俺は統一できる・・・プログラムに勝てるんだ!」 ずいっ、と光の喉に剣先を当てる 光「・・・・な」 誰に聞こえるともない声で、光は呟く 星夜「聞こえないぞ・・・」 切っ先をさらに突きつける。少し刺さったその首からは、血が流れ落ちていた 光「・・けるな」 先ほどよりいくらか声を大きくし、喋る。そして 光「ふざけるなぁっ!」 光は叫んだ。そしてその叫び声にあわせるかのように、彼の持っていた最後のストックボールが開かれる その武器・・・剣は、自らの意思を持つように光の手へと飛び込んできた それは、七色に輝く伝説の武器。神器の中でも最強の武器と呼ばれる、神が作り出した刀、『虹』だった 鹿野「凄い・・・戦闘力だ」 それは、傍目に見た感じでも見て分かるくらいであった 大気が震える。しかしそれは怯えるのではなく、まるで武者震いのような振動 虹を持った光は、さきほどのグランドリオンとはまるで比べ物にならないくらいのオーラを発していた 星夜はその姿に、無意識のうちに後ずさりする 光「惑さん・・・あなたは間違っている・・・」 いつもの光からでは想像できないような、威圧感があり、よく通る低い声 光「なんで・・・なんで皆戦おうとするんだ。争いは何も生まない・・・何も、生まないのに・・・」 ジリジリと星夜に詰め寄る 星夜「くっ・・・くそっ、くそっ、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 咆哮。雄叫びをあげる。そして狂ったように光へと飛び掛っていく それと共に・・・光は剣を振るった 「シュバァッ!」 肉を斬る音とともに、袈裟状に斬られた星夜の体から鮮血が飛び出した 星夜「く・・・そ・・・」 倒れる星夜。それと同時に、光は虹を床に落とした 「カランッ」という金属音が鳴り響き、気を失い、星夜と同じく倒れそうになる。龍一がそれを慌てて抱きとめた 龍一「体力の消耗が激しい・・・早く帰って休ませないと」 光の腕を取り、自分の首の後ろへもって支える 薫「龍一、鹿野。後は俺に任せて皆を避難させてくれ。光も頼む!」 頷き、校長室から出て行く。教室には薫と星夜が残った 薫「二つ・・・聞きたいことがある」 問う薫。その先にいる星夜は、身を起こし、顔をこちらへ向けていた 星夜「・・・なんだ?」 息が荒く、傷口を押さえている。神器によってやられた傷だ。おそらくもう回復はしないだろう。そんなことを思いながら、薫は尋ねた 薫「一つ・・・何故悪の道に走った」 薫の問いに、星夜は自嘲めいた口調で言った 星夜「・・・光の国から転校してきた国がここでな・・・プログラムが始まる前もだが、この学校は酷いもんだった    日々校内で揉め事が絶えない学校でな。喧嘩なんて、日常茶飯事の様に行われていた。不良の溜まり場。といったところか    今までいたって平凡な日常を送ってきた俺は、そんな学校に飛び込まされた。・・負け犬にならないためには、力が必要だったんだ・・・    勝ち残るためにはどんな汚い事だってした。喧嘩だって負けたことはなかった。まぁ、そんなある日だ。    ありがた〜い総帥から、プログラムが施行されたって聞いたのはな    チャンスだと思った。校長になり、権力を自分の手に握る。俺より強い奴はいなかったし、その目的はすぐ達成できたがな・・・」 顔を歪め、傷口を押さえる。血が止まらず流れ出すそのさまが、妙に痛々しかった 薫「二つ目だ・・・なぜ単独で攻めてきた?牙と闇は同盟を組んでいたはずだろう?同時に攻めてくればこっちだって苦戦したはずだが・・・」 星夜はその言葉を聞き、苦笑する 星夜「なんだ、そのことか・・・悪いが、闇とは既に手を切ってある。いや、切られた。という方が正解だな。    もうかれこれ半年以上前の話だが・・・。ま、それに・・・」 一息つき、更に次の言葉を続ける 星夜「誰にも邪魔されずに・・・アイツが・・・光がどこまで強くなったのかを確かめたかったってのが大きな理由かもな    アイツは昔から、秘めた才能を持っていた。正直、アイツには越されると予想していたよ。ま、実際その通りになったがな    あの野郎、グランドリオンなんか使わないで、最初から虹使ってればよかったものを・・・」 笑う。これが悪党の出す笑みかと思うぐらいに。それは、面倒見のいい先輩が後輩の上達振りをほめている。そんな表情だった そして同時に薫は、ふと廊下側に気配を感じた。扉があった場所へ顔を向けるのと、そこから誰かが入ってくるのは、同時 そしてそれを見て絶句する 薫「闇の国!!」 彼の目の前には闇の国の制服を来た生徒達が立っていた。彼らは持っていたプリズムガンを向けると、発射 薫は星夜の腕を掴むと、間一髪で転がりよける。そして上半身だけを起こし、A.T.フィールドを横一線に薙ぎ払う 「シュバァッ!」 伸びた光の壁はそのまま敵を上下に分断する。倒れた敵は地面に落ちると、溶けるように消えていった 薫「一体どういうことだ!?」 叫び、薫は問う。そしてその目線の先には次々に現れる闇の国の生徒達がいた 星夜「見ての通り・・・闇からも戦略出されてたんだよな・・・これが」 喋り、吐血する。その血飛沫が床へと散った 薫「何故だ!?」 再び問う 星夜「さっきも言ったろ。とっくに闇とは手を切ったんだ。俺たちが光へ戦争しかけたタイミングを見計らってたんだろうな。・・・いやらしい奴らだ」 そして星夜はよろよろとおぼつかない足取りで、校長室の中枢にある真っ赤に輝く物体―起爆装置(コア)へと手を伸ばした 薫「何をする!?」 星夜「橘・・・お前は逃げろ。俺は・・・この戦争を終わらせる義務がある。このコアさえ破壊してしまえば、この学校は崩壊・・・一気に決着がつく」 薫「馬鹿!んなことしたってその間に敵は逃げるか、お前を殺しに来るだけだ!」 そう言い、薫は手を差し出した 星夜「・・・どういう意味だ」 薫「俺には分かる・・・アンタは・・・あなたは本当に悪の道に走ったわけじゃない。まだ、こっちへ戻ってこれる   星夜さん・・・光の国へ戻ってこないか?」 薫から差し出された手を見つめる。だが、ふっと口元で笑うと 星夜「・・・悪いが、もう後戻りは出来ん」 そう言って、拳をコアへと叩きおろした ゴゴゴと、地響きの音がした 退却してた光の国の生徒達は、音のする方向・・・牙の校舎を見た 真「くっ・・・コアが破壊されたか」 コアの破壊。それは即ち、学校の崩落を意味した 龍一「薫はまだ出てこないのか!?」 校門を見るが、人の気配はほとんど無い 鹿野「さっき闇の国の連中も見えたからな・・・心配だ」 ―・・・おかしい 薫は異変に気付いた 薫「崩れ方が・・・違う」 コアが破壊されると学校は崩壊する・・・といっても、それは高層ビルの一階に発破をしかけ、それが爆発した時に綺麗に崩れていくような崩れ方だ しかし、今の状況は違う。なかなか崩れてこないのだ。むしろ、コアを破壊した後の崩落が不自然なほど、この状態は自然であった 薫「本当に崩壊し始めたのか・・・?学校が」 廊下にふと視線をやると、そこにはおびただしい量の血が流れ出ていた。校長室に襲撃に来ていた闇の国の者たちであろう 本来なら死んだ瞬間消え去るのだが、それらは一向に消える気配が無い・・・そう、本当に死んでいたのだ ―どうする・・・? 原因の真相はわからない。だが、予測していたものが一つある。二つの神器の力の解放による共鳴、そしてサタンやキリエラを越える、 グランドリンや真・ラングリッサーの出現。これらの奇異なる状態がこの異常現象を引き起こしたと考えられた 考える薫。と、頭上から落ちてきたコンクリートを間一髪でかわした。床に落ちて砕け、破砕音がする 薫はもう一人この教室にいたものの事を思い出し・・・星夜の居た場所を見る。だがそこに彼の姿は無かった 薫「崩落に飲み込まれたか・・・」 唇を噛み締めて呟く。そして自嘲気味に語る 薫「壁でガードしようにも、質量と量が半端じゃないからな・・・突き破られる・・・か」 ゴトン、と音がした。上を見上げた先には巨大な岩石の塊が落ちてきていた 薫「・・・ここまでか」 覚悟を決めた。走馬灯が頭の中を走る ―せめてもうちょっと・・・生きてみたかったな そして岩石は音を立てて激しくぶつかった・・・ 薫は来るはずの衝撃に耐えた だが、いくら待ってもその衝撃は来ない。おそるおそる目を開けてみる ・・・そこには半透明の、薄暗いバリアーのようなものが張り巡らされていた 驚愕に目を見開く。そしてそれとともに、声が聞こえてきた 『こんなところで諦めるとはな・・・お前の力はそんなもんではないだろう』 恐怖を感じさせるような、低く太く、しかしよく通る声 常人ならばその薄気味悪さと恐怖により気が動転しているところだろう だが薫は不思議とそんな気にはならなかった。知っている気がしたから・・・ 薫「サタンか・・・?」 そう問いかける。彼の腰には二つしかストックボールがついていなかった。青の・・・サタンのストックボールは無かったのである 『左様・・・我こそは大魔王サタンの作り出した武器、サタンクロス。薫よ・・・お主の生きる信念はその程度のものだったのか?  政府に復讐するんじゃなかったのか?お前の愛する者を奪っていった政府に対して、一矢報いてやるんじゃなかったのか?』 愛する者・・・サタンの言葉が深く胸に突き刺さり、今まで意識して考えていなかったことが心の中に湧き上がる プログラムが始まる前、いつも薫の側にいてくれた女性・・・ある日突然、学校にやってきた総統に連れ去られた。 薫は抵抗を試みたが、総統直々に試し打ちを行ったベレッタM92Fによって頭を貫かれた。三日後に目覚め、連れ去られたこととプログラムの開始を聞いた 平和を望む心ももちろんだ。しかし、彼にとってその女性を取り戻したいという心も強かった 『私は中途半端は嫌いなのでな・・・お主の行く末を見届けることは出来なくなったが、あの総統を倒すことを願っているとしよう  ・・・サタンクロスとして宿っていた魂だ。形状を変えた今、私の命もすぐに尽き果てるだろう。・・・新たなる武器を探せ  満月の夜、月の光に産まれる剣・・・ムーに最高機密として存在した・・・私がキリエラ異常に恐れた伝説の剣・・・月光剣を』 薫は自分の意識が急激に薄らいでいくのを感じた。必死に意識を留めようとする。だが意思とは裏腹に、彼の脳はそれを妨げた 『・・・・・・・・・・』 何か言ったような気がする。だが声は聞こえない。しかし、頑張れといったのだと、薫はそう感じた そして意識は闇の底へと沈んでいった それから、気付いた時は皆の顔があった どうやら薫は、体全体がバリアーに包まれ、崩落後の牙の瓦礫の跡に降りてきたのだという 薫は心配する皆に一言告げる。すると彼らを取り囲んでいた者たちは、一人、また一人去っていった 一人残った薫はこの戦争を思い出し、そしていろいろな事を感じていた そしてふと、呟く 薫「後残っているのは・・・闇の国。か」 月影の姿が頭に浮かぶ。どうやって戦おうか。と考える 槍も壁も効かない・・・となれば 薫「月光剣か・・・」 ―探してみるとするかな・・・ 薫は立ち上がり、歩き始めた どこへというわけでもなく、まだ見ぬその剣を求めて・・・
終わらない戦い・・・エンドレスバトル

さて・・・ひとまず読んでくれてありがとう。そしてこの小説を待っていてくれた皆様に感謝の気持ちを送りたいと思います
思えば前編を投稿したとき、以外にも多くの反響がありました
さて、ならば頑張って書くぞー!と意気込んだのはいいが、筆が進んだり進まなかったり・・・思いがけず悩んだりしました
さらに一度、HDDがクラッシュしてCドライブが吹っ飛ぶ・・・マイドキュメントなど、HP関連のデータが全て吹っ飛び、半分書き上げていた小説が消える
という最悪の事態に陥ったりもしました(確かタイトルがやっとこさでてきて、戦闘シーンに入ったあたりです)
無くなったモチベーションをあげながら、頑張って書き進める・・・ふと前編を読んでみると
「あれ?文体変わってる(汗)」っていう風にもなりました(^^;;
また、一時期中編にしようとも思いました・・・ですが、後編が中途半端な長さになったりとても小説として消化できそうにない・・・など思い、やはり当初の
予定の前後編に分けることに・・・
11ヶ月半も皆様には待たせてしまいましたね。原作の学校戦争ではその間にいろいろな人が移り変わりです。時の流れは速いものだ・・・
前編に比べると三倍の長さという、かなりの長さになっていしまいました。
出来れば長いだけじゃなく、読んだ人から面白いと思われる作品であってほしいな・・・そんな願いを込めましょう
最後に、マイペースで書いていいよ。と小説更新を寛大な目で見てくださったシャインスター様、ならびにたくさんの読者の皆様に感謝の言葉を述べた
いと思います
また機会があったらどこかでお会いしましょう

ゆうてぃん

感想のメールお待ちしております

ソースで遊んでます。一番下と鹿野登場シーンの前です(^^)